理学療法士として働いていると、時にはつらさを感じる場面もありますよね。
こんなにつらいのは自分だけなのではないか、現状をなかなか打開できずに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、多くの理学療法士の面談を担当してきた筆者の経験から、理学療法士がつらいと感じる要因や、つらい現状を打開する3つのステップについて解説しています。
本記事を参考に、つらい状況を打開して、ピンチをチャンスに変える参考にしてくださいね。
\理学療法士17年目のイチノセです/
- リハビリテーション部 部長
- 10年以上”人事”業務を兼務し、病院全体の採用業務を担当。
- 300人以上の人事・採用を担当
- 年収700万超え
- これまでの経験を活かし、理学療法士の働き方や転職に関する情報を発信中。
理学療法士がつらいと感じる5つの壁
- 肉体的・身体的な負担が大きい
- 患者さんの方針に対する責任と限界
- 患者さんとの密なコミュニケーションが必要
- 専門的なスキルと知識の継続的な向上が必要
- 給料が安い
肉体的・身体的な負担が大きい
理学療法士がつらいと感じる要因の1つは、肉体的・身体的な負担の大きさです。
職場によっては、患者さんの介助量が極端に多いところもあるかもしれません。
Campoらの報告によると、1日に6~10回患者を移送したセラピストは、患者を移送しなかったセラピストに比べて中等度から重度の腰痛を発症する確率が2.4倍高かったと報告しています。
移乗介助が多い職場は肉体的な負担も大きいです。
移乗介助が少ない職場だとしても、例えば下肢のROMエクササイズで、平均12~13kgあるとされる足を動かす操作は、結構な負担になります。
患者さんの方針に対する責任と限界
理学療法士がつらいと感じる要因として、患者さんの方針に対する責任と限界も挙げられます。
American Physical Therapy Association(APTA)の調査によれば、理学療法士のうち約40%が、患者との意見の不一致が職業上の最大の問題であると回答しています。
患者さんの状態や目標に応じて最適な治療計画を提供するという責任。
時には、患者さんの希望や、「治療への過剰な期待」と「現実」が大きく乖離している場合、理学療法士として対応に苦慮することもありますよね。
こうした板挟みの状態は、精神的ストレスにつながりやすいです。
患者さんとの密なコミュニケーションが必要
理学療法士は、患者の症状や生活背景、感情など、様々な情報を把握する必要があります。
治療効果を最大限に出すためには、普通では考えられないほどの個人情報を聴取することも。
特に外来クリニックや、自宅退院を目指す職場ではその傾向が強いと感じます。
理学療法士のやりがいである一方、多数の人とのコミュニケーションが苦手な理学療法士にとっては、つらいと感じる要因になります。
専門的なスキルと知識の継続的な向上が必要
医学の分野では常に新しい研究や技術が発展しており、理学療法士もその進化に対応するために、継続的な学習が必要です。
例えば、セミナーや研修への参加、専門雑誌や論文を読むことなどが求められます。
理学療法士としての技術研鑽に前向きになれない人にはつらいかも…
勉強が必要なのは、どの仕事でもいえることです。
しかし、「理学療法士」としての技術研鑽に前向きに取り組めない人にとっては、嫌な勉強がつらいと感じる要因になるでしょう。
給料が安い
高いスキルや向上心、多様なコミュニケーションなどのつらさを感じる要因に加え、「給料が安い」というリアルにつらい現状があります。
日本病院協会が2023年に発表した「医療機関における賃金引き上げの状況に関する調査」によると、理学療法士の平均賃上げ率は約1.9%、月4,637円という結果でした。
日本国内の物価上昇率は約3.1%なのに対して、賃上げ率が1.9%。
また、厚生労働省が発表している「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、理学療法士の平均年収は約431万円。
給与だけが全てではないですが、精神的なつらさを助長させる要因になることは間違いないです。
給与がもらえればつらくても報われた気持ちになりますよね。
「給与が低いことでつらさに追い打ちをかけられている」と感じる人がいてもおかしくありません。
理学療法士はつらいだけ?忘れがちな本当の良さとは
ここまで読んでいただくと、「理学療法士ってやっぱりつらいだけなんだ…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
今まさにつらい状況に置かれている方は、なかなか理学療法士の良さに目を向けるのは難しいでしょう。
ここでは、理学療法士をやめた共同筆者のマキノが改めて思う「理学療法士の良さ」を解説します。
- 「人の役に立つ」が大前提
- 「良い」同僚が多い
- 国家資格という強み
「人の役に立つ」が大前提
理学療法士の忘れがちな良さの一つは、「人の役に立つ」が大前提なこと。
医療業界にいると「当たり前」になりますが、超貴重なんです。
一般企業だと、どんな仕事でどんなきれいごとを並べても、どこか「商品を売るという利益のため」が見え隠れします。
本当の意味で「患者さんのため」という良心で仕事が出来る。
こんな素晴らしいことはありません。
「良い」同僚が多い
理学療法士業界は「良い」同僚が多いです。
「成果」主義が当たり前な企業では、「相手よりも自分が利益を上げる」という「競争」があることがほとんど。
場合によっては、あなたを蹴落とそうとしてくる人がいる場合もあります。
理学療法士ってそういう「悪人」はいないですよね。
少なくとも、私自身はそういう人に出会ったことがないです。
国家資格という強み
あなたが頑張って取得した「理学療法士」という国家資格は、今後も失われることはありません。
例えばいったん他の仕事をして、やっぱり理学療法士の仕事が恋しいと思ったら、いつだって戻ってこれるんです。
理学療法士としての知識を活かして、病院以外で働くことも可能ですよ。
仕事がつらいと感じている理学療法士がやるべきこと
ここで一番重要になるのが、今現在あなたが感じているつらさを解消することです。
理学療法士としてつらいあなたが、単純に「理学療法士をやめる」だけでは、最適な解決策になるとは限りません。
ここでは、理学療法士がつらいと感じるあなたが、つらさを解消するための3つのステップを紹介します。
- つらいと感じる「理由」と解決する「条件」を明確にする
- 自分の「強み」を明確にする
- 自分の強みを活かせる場所を探す
①理学療法士をやめたい「理由」と解決する「条件」を明確にする
自分がつらいと感じる「理由」と解決する「条件」を明確にしましょう。
つらいときほど自分を客観視できなくなっていることが多いので、重要な手順です。
\つらい理由と解決する条件の例/
やめたい理由 | 解決する条件 |
---|---|
理学療法士としての技術研鑽に前向きに取り組めない | 理学療法士としての技術研鑽から解放されたい |
移乗介助が身体的にきつい | 移乗介助のない職場ではたらきたい |
拘束時間が長く、プライベートな時間が少ない | プライベートな時間が充実できる職場で働きたい |
上記のような感じで、具体的に表出することで、「理学療法士をやめて他の職種を検討すべきか」「理学療法士として別の職場に検討すべきか」が明確になっていきます。
やめたい理由を解決できる条件は、理学療法士として別の職場で働くことでクリアできることも多いはず◎
今の現状を打開する方向性を見極めるためにも、あなた自身とじっくり向き合いましょう。
②自分の「強み」を明確にする
つづいて、自分自身の「強み」を明確にしていきましょう。
USJを立て直したことで有名な森岡毅氏も、「キャリアを切り開く方法」として「自分の強みを見つけて磨くこと」の重要性を説いています。
今の辛い現状を打開して、「一歩踏み出してよかった」と思えるためには、自分自身の強みを見極めることが重要です。
③辞めたい理由と解決策×自分の強みを活かせる場所を探す
①と②の手順を踏んで初めて、「自分の強みを活かせる場所を探す」手順に進みましょう!
やめたい理由があいまいだったり、自分の強みが分からないまま転職しても、失敗するリスクが高まるだけです。
辞めたい理由を解決できて、自分の強みを活かせる場所がどこなのかが明確になったら、あとはその場所を探すだけ。
今の職場で頑張ることかもしれないし、理学療法士としての転職・はたまた別の道に進むことかも。
ここまでしっかり取り組めば、今の職場の良さに改めて気づく人もいるでしょうし、理学療法士として新たな一歩を踏み出すことが正解な人もいるでしょうし、別の道に進むことが正解な人もいるでしょう。
きっかけは「やめたい」というネガティブな感情でも、自分をしっかり見つめ直すことはキャリアアップへのチャンスです。
このチャンスに、自分の強みを活かしたキャリアアップをしていきましょう!
理学療法士がつらいと感じたときの注意点と知っておくべき制度
- 一番大切なのは「自分の身体」ということを忘れないで
- 体調に異変がある場合は早めに心療内科の受診を
一番大切なのは「自分の身体」ということを忘れないで
ここまで前向きな解決策を解説してきましたが、「そんな考える余裕もないくらいつらい」という人もいますよね。
「夜も眠れない」「何もしなくても涙が出てくる」「動悸がする」などの症状が出ている場合は、前向きな思考をできる状況ではありません。
まずは「逃げる」「休む」一番大切なのは「自分の身体」ということを忘れないでください。
体調に異変がある場合は早めに心療内科の受診を
体調に異変を感じた人は、早めに心療内科を受診しましょう。
診断書が発行されることもあり、医師に「休養が必要」と判断されれば、仕事を一定期間休むことも可能です。
前向きな思考が出来るまで休むというのも一つの選択肢ですよ。
理学療法士がつらい人からよくある質問
- 理学療法士をやめたら後悔しないか不安
-
一歩踏み出そうとするときは不安ですよね。とてもよく分かります。
理学療法士をやめた6名の体験談をまとめているので、そちらの記事も参考にしてくださいね。
- 職場を変えるべきか理学療法士自体をやめるべきか悩んでいる
-
正解が分からないからこそ、つらいですよね。
理学療法士としての転職と、理学療法士をやめた筆者から言えることは、「つらい原因」の解決策と、自分の強みを分析すると、見えてくるものがあります。
あなたが強みを活かして羽ばたくことを応援しています。
まとめ:理学療法士がつらいときこそ自分と向き合うチャンス
理学療法士として働くことは、やりがいがある一方でつらいと感じることもあります。
本記事では、理学療法士がつらいと感じたときの対処方法や注意点について解説しました。
- 理学療法士がつらいと感じる理由とあなたの強みを明確にして自分に合った一歩を踏み出してみよう
- 体調に異変がみられる・考える余地もないほどつらいなら逃げる選択肢もあり
一度きりの人生。あなたに合った選択肢を見つけることで、今の現状を打開していきましょう。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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